大阪地方裁判所 昭和43年(ヨ)2504号 判決 1969年9月25日
申請人 日浦陞 外六名
被申請人 日本アルミニウム工業株式会社労働組合
主文
被申請人は申請人上村、同牧瀬、同小田、同千田、同富永、同深井をその組合員としての権利を有する組合員として仮りに取り扱え。
申請人日浦の申請を却下する。
訴訟費用中、申請人日浦と被申請人との間に生じたものは同申請人の負担とし、その余の申請人と被申請人との間に生じたものは被申請人の負担とする。
事実
第一当事者双方の求めた裁判
申請人等訴訟代理人は「被申請人は申請人日浦をその組合員として取り扱え。被申請人が昭和四三年三月六日申請人上村、同牧瀬、同小田、同千田、同富永、同深井に対してなした各昭和四三年三月一一日より昭和四五年一〇月三一日までの権利停止処分の効力を停止する。」との判決を求め、被申請人訴訟代理人は「本件申請を棄却する。」との判決を求めた。
第二申請の理由
一 当事者について
被申請人組合(以下、組合という)は日本アルミニウム工業株式会社(以下会社という)の従業員約八〇〇名をもつて組織される労働組合であり、中央機構に最高議決機関として中央大会を次級議決機関として中央委員会を、また執行機関として中央執行委員会を各有し、さらに大阪本社工場、東京事務所、伊勢原工場(神奈川)の事業所単位に支部を設置して、各支部に議決機関として支部代議員会、執行機関として支部執行委員会を有する。そして、中央大会の承認を得て、大阪支部執行委員九名が中央執行委員となつて中央執行委員会を構成し、そして同支部代議員一八名、東京支部長、伊勢原支部長および同支部選出委員二名が中央委員となつて前記中央執行委員とともに中央委員会を構成する。
申請人日浦は、昭和三二年三月に会社に入社し、同年五月に組合に加入して、昭和三八年一一月以降会社総務部勤労課に所属し、組合では昭和四二年一〇月一八日大阪支部代議員に、翌一一月六日中央委員に各選任された。その余の申請人らは、いずれも会社の従業員であるとともに組合の組合員であり、そのうち申請人上村、同牧瀬、同千田、同富永は同日浦と同様に組合の中央委員兼大阪支部代議員に選任されていた。
二 組合が申請人日浦を非組合員としたこと
(一) 経緯
組合は、昭和四二年一二月二六日申請人日浦に対し、組合規約第二条第八号、第一一条第三号を適用して、組合員資格を喪失させた。
すなわち、組合規約には、第二条において組合員の範囲につき「本組合は日本アルミニウム工業株式会社在籍社員の内次の者を除いた全従業員を以つて組織する。1会社役員、相談役、顧問2各課長以上及び技師、参事、部長付、3経理部各課主任以上、4総務部勤労課及び人事課主任以上並びに人事主担者5総務部守衛全員6秘書7嘱託及び試用期間中の者8其の他会社組合双方協議の上承諾した者」、第一一条において組合員資格の喪失につき「組合員は次の各号のいずれかに該当するときはその資格を喪失する。3第二条により非組合員になつたとき」、と定められているところ、組合では昭和四二年一二月一三日大阪支部代議員会(総代議員一八名中一三名出席)において、会社が申請人日浦に会社の労政上の機密に属する職務を取り扱わせるため同申請人を非組合員にしてもらいたい旨、会社から申し出があつたとして、その可否につき審議したうえ、同申請人を非組合員とする旨の決議(以下本件組合脱退決議という)を七対六で可決した。そして、組合は右決議に基づき前記各規約を適用して、昭和四二年一二月二六日申請人日浦を組合から脱退させて非組合員とした。(以下本件組合脱退処分という)
しかしながら、右決議には次に述べるように手続上および実体上の瑕疵があるので無効ないしは取消されるべきであり、したがつて同申請人は組合員として取扱われるべきである。
(二) 手続上の瑕疵
1 大阪支部代議員会には議決権限がないこと
組合規約第二九条第二号には「重要な会社提案に対する方針及び具体策」は中央委員会の議決又は承認を要する旨の規定がある。ところで、申請人日浦は大阪支部代議員であるとともに中央大会の承認により任ぜられた中央委員でもあるから、同申請人を非組合員とする案件は組合規約第二九条第二号にいう「重要な会社提案」に該当し中央委員会の承認がなければ決せられないというべきところ、本件においては本来右案件につき議決権限のない大阪支部代議員会で議決されたのであるから前記組合規約に違反し手続上の瑕疵があつて無効である。なお、被申請人はこの点につき、大阪支部代議員会と中央委員会の各構成員が概略一致することを理由として、前者が後者を兼ねていた旨主張するが、両者が混同されたことはなく峻別した運用がなされていた。
2 招集手続が違法なこと
仮りに大阪支部代議員会に申請人日浦を非組合員とするにつき議決権限があつたとしても、その招集手続には次のような違法があるので、前記決議は無効である。すなわち、前記大阪支部代議員会は招集されるに際し、議題として「(1)旅費規定労使小委員会に係る件(2)年末年始特出割増に関する会社回答に係る件(3)年間休日協定に係る件(4)その他の件」が明示されていただけで、申請人日浦を非組合員とする案件はあらかじめ代議員に知らされていなかつた。
そもそも大阪支部代議員兼中央委員である申請人日浦を非組合員とするかどうかは、本人の意向やその職務上の義務や責任が組合の組合員としての誠意や責任と直接に抵触する監督的地位にあるかどうかもしくはそのような地位に就任することが予定されているかどうか等を十分検討し審議を尽さなければならない重要問題であり、しかもこの案件はそれ以前の代議員会でも問題とされていた重要事項であり、また人事とはいつてもプライバシーに関することではなく組合における公的なものである。したがつて、これを代議員会において審議するには、その招集に際してあらかじめ議題として提示され代議員にこれを周知せしめる必要があると解されるところ、本案件についてはかかる手続がとられることなく代議員一八名中一三名出席の代議員会において突如議題として提出されたうえ、これを賛成七名反対六名という一票差で強行採決したことは適正な手続に違反し右決議は無効である。なお、人事問題は案件として事前に通知しない旨の慣例などはない。
3 なお、昭和四三年六月八日にあらためて中央委員会で本案件につき議決が為されたとの点は知らない。
(三) 実体上の無効
組合が申請人日浦を非組合員とするのに根拠とした、組合規約第二条第八号の趣旨は、その規定からも明らかなごとく同条第一号から第七号には直截に該当しないが右各号のカテゴリーに近接するものであつて、その者の職務上の義務や責任が組合員としての誠意や責任と直接抵触する監督的地位にある労働者、その他使用者の利益を代表するものであることが必要であつて、組合は右に該当しない者に対してまで、だれかれとなく非組合員とすることはできないのである。
ところで、申請人日浦の会社における職務は勤労課に所属し(1)労働統計調査(2)勤怠並びに労働時間の管理及び統計調査(3)有給休暇並びにその他諸休暇の管理(4)家情調査並びに家庭との連絡業務(5)旅費の査定(6)通勤定期券購入等の手続である。なお、被申請人の主張する、経営協議会に出す会社側の書類作成等の機密事項は、勤労課長以上の職制が担当する職務である。そして、かかる申請人の職務上の義務や責任は、組合員としての誠意や責任に直接に抵触しないし、ましてや使用者の利益を代表するものでないことは明白である。従つて、組合においては、本人から表明されていた極力反対の意思に反してまで同申請人を非組合員としなければならない合理的理由は全くない。
そもそも組合においてかかる処置をとるに至つた真の理由は、申請人日浦は他の申請人らとともに現組合執行部の批判勢力の中核であつて、昭和四一年一〇月および昭和四二年一〇月の組合役員選挙(三役および執行委員)には現組合執行部の対立候補として出馬したりしたため、現組合執行部は申請人らの批判勢力を目のかたきとし、さらにはその拡大に脅威を感ずるのあまり、卑劣にも申請人らを何とかして組合から排除しようと考え、その方策としてまず申請人日浦に対して非組合員とすることを思いつき、会社に圧力をかけて会社から組合に対して、同申請人を非組合員にしたい旨の申し入れをなさしめ、ついでこれに基づいて大阪支部代議員会で同申請人を非組合員とする決議を強行採決したのである。そしてかかる意図は、同申請人を非組合員にしたときに生ずるつぎのような不合理や異常さからも窺われる。すなわち、同申請人の会社における職務は非組合員となつた前後で何ら変りがなく、非組合員になつた後も依然として労政の主担者の職務からほど遠い定期券の購入、旅費伝票のチエツク等の業務に従事していたにすぎず、また従前の社内慣行では非組合員になるべき人事、労政の主担者には相応の年令や業務歴を有し、かつ大学卒業者が任ぜられていたのに、今回は年令二六歳で高校しか卒業していない同申請人をもつてこれに擬すべきことになつたのである。
以上の次第で申請人日浦を非組合員とする本件組合脱退処分は実体的にも組合規約に違反し無効といわなければならない。
三 組合が申請人上村、同牧瀬、同小田、同千田、同富永、同深井を組合員の権利停止処分にしたこと
(一) 本件権利停止処分の前提となる第一次処分とその無効性
1 第一次処分
昭和四三年二月二日午前七時半頃から約一時間にわたり申請人上村、同牧瀬、同小田、同千田、同富永、同深井らは、外七名の組合員とともに前記決議の不当性を訴えて、「組合員の皆様に訴える」旨のビラ(別紙第一)約六〇〇枚を組合員に配付した(以下第一次ビラ配布行為という)。
しかるに組合は、同月一二日前記ビラ配布行為が組合規約第一五条「組合員は組合機関の行動、決定についても報告を求め、意見を述べ其の他組合活動の自由を持つが組合員として組合機関を通じて行なう」同第一七条「組合員は組合規約を遵守し機関の決定にしたがい組合の健全なる発展のために努力する義務を負う」に違反するものとして同第六一条「本組合員にして次の各号のいずれかに該当する行為のあつたときは処罰を受ける」同条第一号「組合規約に違反し機関の決定に従わず統制を乱したるとき」同第二号「組合の運営、事業の発展を妨げたとき」を適用して、右申請人らに対し、次のとおりの処分(以下第一次処分という)を行なつた。(1)同上村。権利停止五日間(2)同富永、同千田。賦課金二日分戒告(3)同牧瀬、同深井、同小田。賦課金一日分戒告
2 第一次処分の無効性
申請人上村等が第一次ビラ配布行為を為すに至つた理由は、申請人牧瀬が、昭和四三年一月三〇日右決議について組合より報告を求め、また再度審議してほしい旨の緊急動議を書記局に提出したのにも拘らず、いずれもこれを拒否されて、組合執行部の善処が全く期待できなかつたうえ、申請人日浦を非組合員としたことは極めて異常かつ不可解な事態であつて現組合執行部が申請人日浦を組合から排除するための策謀であることが歴然としていたので、右申請人等はやむなくこの事実を一般組合員に訴えざるを得なかつたのである。そしてビラの内容も極めて穏健なものであつて、右行為は組合活動の自由、言論の自由の範囲に属するものである。組合がこれを組合規約第一五条同一七条に違反するとしたのは不当であつて、組合のした第一次処分は無効といわなければならない。
(二) 本件権利停止処分とその無効性
1 本件権利停止処分
申請人上村、同牧瀬、同小田、同富永、同千田、同深井は、第一次処分が無効であると考えたので規約に従つて再審査の申立を行なつたが、昭和四三年二月二〇日右申立は却下された。
そこで申請人牧瀬、同小田、同千田、同富永、同深井は第一次処分が組合活動の自由、言論の自由という組合員の基本的権利を不当に侵害した本質的に無効なものであつたので、いずれも賦課金の支払をせずかつ始末書を提出しなかつたし、また、申請人日浦も独自の立場で昭和四三年三月五日「公平な組合員の皆様に御協力をお願いします」ビラ(別紙第二)を組合員に配布し、申請人上村等もそれに立会つたところ(なお申請人上村の場合は五日間の権利停止期間を経過していた)、組合は三月六日標記申請人らに対して、これらの事実を懲戒事由として、次のとおりの処分(以下、本件権利停止処分という)をした。(1)同上村、同牧瀬、同千田、同富永。組合の役職を解任し、昭和四三年三月一一日より昭和四五年一〇月三一日まで組合員の権利停止(2)同深井、同小田。前記同一期間の権利停止
2 本件権利停止処分の無効性
しかしながら、本件権利停止処分は次の理由により無効といわなければならない。
すなわち本件権利停止処分も申請人日浦の場合と同様に、組合の現執行部がその批判勢力の中核たる申請人らを組合から排除すべく意図して為された不当なものであるうえ、前述のように第一次ビラ配布行為は組合員の正当な権利の行使であつてこれに対する第一次処分こそが無効なのであるから、申請人牧瀬らに対してこの無効な処分に従わないことにつき再び組合の統制をみだしたと判定として、再度加重的に長期にわたる組合員の権利停止処分を行なつたのは全く不当であり、しかも、本件権利停止処分は、一の行為に対して二重の重畳的処分をしたという意味においても不当である。
四 保全の必要性
以上のように、申請人日浦に対する本件組合脱退処分およびその余の申請人らに対する本件権利停止処分はいずれも無効であるというべきであるが、被申請人においては、前記各処分が為されたことを理由として申請人らに対して、組合活動から排除しあるいは組合の意思決定に参加させないでいる。しかるところ、申請人らは活発な組合活動家であつて、ことに組合執行部に対する批判活動を行つて来た者であるところ、このまま組合活動が阻害されたのでは償うことのできない損害をこうむることになるのでかかる事態となるのを避けるべく本件仮処分命令を求める。
第三被申請人の答弁及び主張
一 被申請人の答弁
(一) 申請の理由一に対する答弁
組合員数は一、一〇〇名である。その余の事実は認める。
(二) 申請の理由二に対する答弁
(一)記載の事実については、当該大阪支部代議員会の出席者数は大阪支部執行委員八名、大阪支部代議員一三名計二一名であつて、採決では反対が六票あつたとしても賛成は一五票を下らなかつた。その余の事実は認める。
(二)1記載の事実のうち、組合規約二九条の文言は認めるが、その余は否認する。なお、大阪支部代議員会は、慣例により中央委員会を兼ねていた。
(二)2記載の事実のうち、大阪支部代議員会招集の際に明示されていた議題が申請人主張のとおりであることは認めるが、その余は否認する。
(三)記載の事実のうち、申請人日浦が高校卒業者であることは認めるが、その余は否認する。
(三) 申請の理由三に対する答弁
(一)1記載の事実は認める。
(一)2記載の事実は否認する。
(二)1記載の事実のうち、申請人小田については、申立が受理されて再審査がなされその結果原裁決が維持されたものであり、申請人らが第一次処分に従わなかつた動機および本件権利停止処分の対象となつた行動については否認するが、その余は認める。
(二)2記載の事実のうち、申請人上村が同日浦のビラ配布に協力したのが権利停止期間経過後であることは認め、その余を否認する。
(四) 申請の理由四に対する答弁
争う
二 被申請人の主張
(一) 申請人日浦を非組合員にしたこと(本件組合脱退処分)について。
1 経緯
会社では、昭和四一年秋頃から営業部門を強化する方針をたて多数の従業員を事務部門から営業部門へ配置換して来たため、事務部門の勤労課では人手不足となり課員が兼務して事務処理せざるを得なくなつていた。そして、昭和四二年一〇月初旬頃大谷総務部長が組合に対して、「勤労課が人手不足のため申請人日浦に仁熊主任(労政担当)の業務を全面的に補佐させたいので非組合員にして欲しい」旨を申し入れたので、組合としては、同申請人は中央委員なので慎重に取扱うことと、同申請人が納得したら文書で申し入れて欲しい旨回答した。しかるところ、同月二八日会社から組合に文書による申し入れが為され、それについては同申請人が現在若干機密に属する部類の職務を行つており、且つ勤労課の手が足りないのでこれから経営協議会に出す会社側の書類の作成等機密事項を職務内容としてつけ加えたい旨を説明された。そして、会社は同申請人より職務内容の変更につきあらかじめ了承を得ていたのであるが、組合においても同月三〇日脇書記長が組合事務所で前記申入書を同申請人に示してこれを伝えたところ、同申請人も「しやないな」と述べて暗に了承した。
かくして組合では、右申入れについて同年一一月二日大阪支部代議員会兼中央委員会を開いて検討したが結論に到らなかつたので、一二月一三日午後の支部代議員会において若干の反対意見はあつたが絶対多数で日浦を非組合員とすることに議決した。そこで、組合は、同年一二月一四日正式に文書で会社に対して前記申入を了承した旨を回答し、同月二六日会社より同日付で申請人日浦が非組合員となつた旨回答されたものである。
2 本件組合脱退処分の手続要件について
(1) 中央執行委員会の同意
申請人日浦を非組合員とする件については、組合と会社間の経営協議会規約(以下協議会規約という)によれば、会社からの提案に対して組合の執行委員会が同意して決定される旨規定されている。すなわち、同申請人を非組合員にするのに根拠規定となつた組合規約第二条は組合と会社間の労働協約第三条覚書(一)(二)によつて更に人数等が具体化され、組合規約第二条第八号については、労働協約第三条覚書(二)の第七号に同旨の規定が設けられている。そして、会社と組合の協議方法については労働協約第九条によつて協議会規約に規定されることになり、労働協約に「協議して」や「協議する」とうたわれている事項は協議会規約第四章(第六条及び第七条)に、協議及び懇談事項として掲げられているところ、第六条には「左の事項に関しては本会に事前に附議の上決定する。組合員の雇傭、解雇及び職場の変更等人事に関すること」と定められている。そして、組合において申請人日浦につきその職務内容の変更を承認したうえ同人を非組合員にしたことは、右協議会規約第六条第四号に該当ないしは準ずるものということができる。けだし「職場の変更」とは、就業場所が変更される場合のほか職務内容のみ変更する場合も含むと解され、そして変更される職務内容次第では必然的に非組合員にならねばならない場合もあるから、この点より考えれば組合員を非組合員とするについての協議は右協議会規約第六条第四号に準ずるといいうるからである。そして、同条但書には「一部従業員に関する事項に付ては本会を省略し組合機関の同意を得て実施することができる」と規定されているので、申請人日浦を非組合員にする件については、まさに右条項に該当し組合の執行委員会が同意すれば足りるわけである。もつとも組合では次項で述べるとおり、大阪支部代議員会兼中央委員会において討議をなし議決しているが、これは申請人日浦が中央委員兼大阪支部代議員であつたため組合の実際的な運営と団結上の配慮から政策的に行つたものである。
なおこの点につき、申請人は、申請人日浦が組合の大阪支部代議員兼中央委員であるが故に同人を非組合員とする案件は組合規約第二九条第二号にいう「重要な会社提案に対する方針及び具体策」に該当し中央委員会の議決又は承認を要すると主張する。
しかしながら組合員及び非組合員の範囲は労働組合法第二条第一号ならびに組合規約第二条により自ずと定まつているものであり、同申請人の職務内容の如何が判断の対象とされるべきであつて、大阪支部代議員兼中央委員という組合の役職にあるか否かにはかかわらないものである。また、重要な会社提案というのは実質的にも会社全体、あるいは組合員の大多数に関するもので、かつその変更内容が重要な影響を与えるものであつて、形式的には社長名で提案されるべきものである。しかるに右案件は申請人日浦一個人の問題でありかつ、大谷総務部長名で提案されたものであるからこの点からしても重要な会社提案に該当しない。
(2) 大阪支部代議員会兼中央委員会の議決
仮りに、申請人日浦を非組合員とする件が、組合規約第二九条第二号所定の「重要な会社提案」に該当するとしても、中央委員会に相当する大阪支部代議員会の議決を経ている。すなわち、申請人も認めるように、組合の大阪支部においては、支部執行委員九名が即組合中央執行委員会を構成し、同支部代議員一八名が即組合中央委員となつて伊勢原支部より三名、東京支部より一名の割合で選出された中央委員ならびに前記中央執行委員九名をもつて組合中央委員会を構成している。このように、大阪支部は他の支部に比べ非常に大きくかつ大阪支部代議員会の構成が中央委員会の構成とほぼ一致し、しかも中央委員会が開かれる都度東京、伊勢原より駆けつけるのは不可能に近い等の理由から、大阪支部の中央委員及び中央執行委員によつて行われる大阪支部代議員会が中央委員会を兼ね、その事前事後に東京、伊勢原各支部選出の委員に電話連絡で意見を求めかつ報告するにとどめる慣行となつていた。そして、昭和四二年一二月一三日の大阪支部代議員会においても中央委員会を兼ねていたものであつて、東京、伊勢原各支部選出の委員に事前事後に電話連絡し、またそこで為された議決は中央委員会議決としての効力を有する。
なお申請人は、右代議員会の招集に際して申請人日浦を非組合員にする件が議題として掲げていなかつた点を違法であると主張するが、人事についてはプライバシーの問題もあり案件として掲げないのが慣例となつている。
(3) 中央委員会の議決
昭和四三年六月八日東京、伊勢原各支部選出の委員を含む正式の中央委員会が招集され、申請人日浦を非組員としたことにつき審議がなされ、全員一致で承認された。
3 本件組合脱退処分の実体要件
(1) 根拠規定について
組合規約上の根拠としては、申請人日浦が、非組合員の範囲を定める第二条各号のうち第四号「総務部勤労課及び人事課主任以上並びに人事主担者」の「人事主担者」に準ずるものと判断し、同条第八号の「会社、組合双方協議の上承諾した者」を適用し、第一一条第三号により組合員資格を失つたものであるが、右条項を実施するためにはさらに労働協約においても次のように規定されている。すなわち、労働協約にはユニオンシヨツプ条項があり、非組合員となつた者については会社が解雇する定めとなつているところから、これに対応して前記組合規約によつて組合員資格を失なつた者に対しては、ユニオンシヨツプ条項の適用を受けないようにする必要があり、そのために同条項の適用を受けない者の範囲を労働協約で定めることとし、その第三条および同条覚書(二)において組合と会社は協議して一定の者を非組合員とすることができることになつている。そして、この覚書(二)の(4)によると「総務部勤労課主任以上及び人事担当者四名」につき会社と組合が協議のうえ非組合員とすることになつており、この条項により、申請人日浦は会社在籍の従業員のままで非組合員になつたものである。
(2) 申請人日浦の職務内容について
申請人日浦は昭和三二年三月頃入社したが、昭和三七年五月頃から総務部勤労課へ転籍し、昭和三八年三月頃作業員から業務員に職掌をかえ、総務部保安厚生課に転籍し、昭和四〇年九月頃保安厚生課は勤労課に吸収され、今日に至つた。そして、同申請人は昭和三七年頃から保険事務を処理してきたが、保安厚生課が勤労課に吸収された同四〇年九月頃以降人事的な事項や労政的事務の処理をはじめ、以来右業務の処理には習熟していた。
そして、昭和四二年一〇月頃の総務部勤労課の業務体制は、課長の統轄のもとに、人事、労政、給与のグループと福祉厚生、社会保険のグループおよび安全警備のグループの三グループに分かれて、課長以下三〇名が在籍し、その内訳は男子二六名女子四名であつて、このうち組合員は女子の四名、男子作業員の二名、男子業務員の三名計九名であつた。
そして、申請人日浦は時岡勤労課長(人事等担当の副長兼務)ならびに労政担当主任の仁熊主任のもとで、次のような業務に従事していた。(1)勤怠カードの確認(2)旅費支給伝票の検印(3)労働時間外協定(4)実労働時間把握(5)通勤定期券斡旋(6)出張者切符予約手配(7)有期工勤怠、異勤の把握。このうち(1)(4)はいわば人事考課的な業務であつて第一次査定的役割をはたしており、(3)については、申請人日浦自身が会社側立場でもつて組合員と交渉する窓口となつていたもので、残業を多くしたいという会社側の要求と、無理な残業はやめたいという組合員との双方の利害が対立すれば、同申請人は自ずと会社側の利益を代表せざるを得なくなり、(7)についても、有期工に関して前歴照会や作業考課あるいは人事資料を一手に収集し、有期工の採否や異動、本工への登用等に関する機密事項も掌握できたのみならず、仁熊主任が不在の時には有期工との面接を担当するなど、人事権の行使にも関与していた。
他方組合員のうち、女子の四名は庶務、賃金計算社会保険の補助事務に従事し、男子作業員の二名は清掃係と安全通路線引係であり、また、男子業務員三名についても、うち一名は安全管理業務に従事しており、労使の対立する利害の処理にかかわらない分野であり、申請人日浦を除く他一名の業務員(赤沢一憲)も昭和四二年一〇月二八日非組合員となつた。
しかるところ、会社では前述のように、昭和四一年秋頃以降とられた営業強化策の結果、勤労課では人手不足を来たしこれをカバーするために、会社は今後は申請人日浦に仁熊主任の担当事務を全面的に補佐させてゆこうとした。
かくして、大谷総務部長から前記申し入れがなされた次第であつたが、組合としてもこれらの業務上の義務及び責任が組合員としての誠意及び責任と相容れないものであると判断して会社の申入れに応ずることにしたものであつて何ら判断に誤りはない。なお、高校卒業者であつても副長、主任になる事は他にも多くの事例があり、大学卒業者でないからといつて不合理ではない。また勤労課の中でも重要な労政担当者は、従来からの課長と仁熊主任及び申請人日浦であつたから、同申請人が唯一人の直属上司の仁熊主任の仕事を補佐し重要事項に携わることも十分ありうるわけである。
4 申請人日浦を非組合員にした意図について
現組合執行部がその有力な批判勢力の中核である申請人日浦を組合から排除するため、会社に圧力をかけて会社から申請人日浦を非組合員にしたい旨申し込ませたと主張するが、否認する。申請人日浦を中心とする申請人らのグループは、後に詳述するように会社の意を体して組合破壊活動に専念してきたものであり、組合は、会社が申請人日浦らを使嗾して行なつているかかる組合の団結に対する破壊行為をやめるよう、これまでにも再三会社に対し糾弾してきた。そして、組合としては申請人らのこれら団結破壊行為について統制処分をもつて対処することも可能であり、そうなれば右行為は本来除名処分に相当するものであるが、労使間にはユニオンシヨツプ協定が存在するため除名処分にすると、解雇という労働者にとつて決定的な打撃を与えることになる。しかるところ、前述のように大谷総務部長から前述の申入れがなされたので、組合としてもこの会社の申入れに応じて組合員として相応しくない団結破壊者を非組合員にすることが、より妥当な解決方法であると考えて、会社の申入れに容易に応じた次第である。このように、申請人日浦を非組合員にしたことは、労働者の生活を破壊することなく、かつ組合に対する破壊活動を防ぐためとられたやむを得ない措置なのであつて、その動機を非難されるべきいわれはないし、またこの間の事情は、なんら本件非組合員化措置の有効性にはかかわりのないことである。
5 組合規約の運用における自主性の尊重について
申請人日浦を非組合員にすべきかについては、その職階および職務に照らして文言上直ちに該当する条項が組合規約になく、組合規約条項の解釈判断によつてかかる結論が導き出されたわけである。
しかして、このような場合の組合規約の解釈権は第一次的には当該組合にあり、客観的にして重大かつ明白な規約の適用の誤りないし解釈の誤りがあると認められない限りは、第三者(裁判所も含めて)は当該労働組合の自主的解釈、適用を尊重すべきである。けだし、労働組合規約は当該労働組合の団結と統一のための規範であるところ、組合は独自のたたかいと生成発展の歴史をもち、かつ常に発展しつつある運動体であり、自主的組織体であるから、第三者が組織の実体をよく理解せず安易に当該組合の規約の解釈、運用を云々するときは、当該組合の組合員の規範意識と実体から遊離し著しい誤りを犯すことになりかねないからであり、ことに第三者が裁判所である場合は権力的にこの誤りを押し付けるという重大な結果を惹起することにもなりかねない。そして、このように理解することが労働者の階級的組織体である労働組合の自主性(使用者のみならず国家からの自主性)を尊重し保障する所以である。
そして、前述したように組合においては、申請人日浦の職務の性質(組合員としての適格性ならびに会社の業務上の必要性)についての理解ならびにこれに対する組合規約の解釈・適用には、客観的にして重大かつ明白な違法はない。
(二) 申請人上村、同牧瀬、同小田、同千田、同富永、同深井らに対する本件権利停止処分について。
申請人上村ら六名に対して為された第一次処分および本件権利停止処分は、申請人らの行つた組合破壊をねらう不当悪質な行為を対象とするものであり、団結の擁護上やむなく行つたものである。
1 申請人らにおける組合破壊の意図と反組合行為
申請人らは、かねてからもと警察官で会社の勤労課係員として人事を担当している服部辰郎や技術部次長で施設課長を兼務していた橋本節夫(現在技術部長)らに指導されて組合内に反組合的グループをつくり、会社の意をうけあるいは会社と一体になつて組合を破壊しまたその階級性と自主性を抜き去つて、組合を会社に従属するいわゆる労使協調路線に立つ非自主的労働組合に換骨奪胎し、もつて労働組合組織を会社の人事管理機構に代置せしめるべくつくりかえていくことを意図し、策動していた。
即ち、(1)申請人ら七名はたびたび服部と共に会社内で会合をもつたり、服部方や申請人日浦方あるいは特定の喫茶店で集合してあれこれ相談した。とりわけ組合の支部代議員会および中央委員会のあつた後は、右のような会合をもつて、組合中央委員会における討議状況等を会社側に流すなどして、情報の交換と組合対策を協議していた。(2)昭和四一年一一月二日申請人日浦は組合員で組合青婦対策部の青婦会幹事であつた松江安紀子を喫茶店「はなぞの」に呼び出し、「あらぐさ」(青婦会と教宣部が中心となつて昭和四一年六月頃開始した学習サークル)に出席するメンバーと学習の内容についておしえてほしい、また誰がどのような発言をしているかおしえてほしいとしつこく要求し、更に継続的にスパイ行為をするよう要求した。(3)同申請人は昭和四二年一月九日午後七時頃から組合会議室において「あらぐさ」のサークル員が新年会を開催した際、午後七時頃から九時頃会の終了するまで守衛室において様子を監視していた。(4)昭和四一年一二月頃申請人深井同小田同日浦同牧瀬らは、中央委員兼大阪支部代議員であつたところ、その頃執行委員中村強が喫茶店で会社勤労課主任仁熊主任と話をしているところをとらえて、店にいあわせた服部から中村執行委員を失脚させるとともに執行部に対する信用を失ついさせるためにこの事実を歪曲して利用するよう指示をうけて、右申請人らはその頃委員会において緊急動議と称して中村執行委員が組合委員を会社に売るような言動をしたから事実を調査したうえ、しかるべき処分をなすよう提案して、組合を混乱におとしいれようとした。(5)昭和四二年六月頃服部および当時同人らと同じグループに属していた時岡滋夫勤労課長は、組合中央委員坊和夫を会社応接室に呼び出し「執行委員に立候補すれば応援してやる」「お前の弟が巡査部長の試験に二回も落ちているのはお前が組合に関係しているからだ。われわれの言うことを聞かないとまた落ちるぞ」とか「日浦君(申請人)のように立派な組合委員もいる」のだからこの人を見習えという趣旨のことを繰り返し述べて、会社の意図する組合活動を行なわせようとした。(6)昭和四二年八月頃服部の指導下に申請人七名等は、交通事故のため約一年間休職していた施設課村上喜治(当時一七才)の全快祝を行うと称して、村上の職場とは関係のない人物即ち申請人らの工作対象とする人物に呼びかけ、約一五名集めて(多数の者が断わつたので)一人一〇〇円の会費で一人当り三本位の割合の量のビールを接待した。ビールは服部を通じて入手したものであり同人は「私は組合側でも会社側でもありません」「こんな機会を度々もとう」「組合が今のような状態ではいかん」という趣旨の発言をした。(7)昭和四一年度役員選挙に申請人牧瀬らが立候補すると、成富人事課長、時岡副長、服部らが組合員に対して推せん依頼をして廻つており、昭和四二年度役員選挙では申請人日浦が村木主任(非組合員)に執行委員に立候補するかを相談している。(8)昭和四二年度春闘大会では申請人らのグループの一人である森岡が、虚偽の事実を挙げて西山委員長不信任および青婦会解散の緊急動議を提出した。
しかして、最近では申請人らは、「組合員の権利を守る会」の名で「IMFJO」路線に沿つた鋼領的文書を配布して第二組合結成ののろしをあげ、公然と悪らつな組合幹部攻撃をはじめ組合の決定と方針を中傷しさらには思想攻撃まで加えて、組合の混乱と分裂を策している。
2 第一次処分について
そして、申請人ら七名は前述のような意図による組合破壊活動の一環として、昭和四三年二月二日会社の出勤時である午前七時三〇分頃から約一時間にわたり会社門前において出勤して来た組合員に対して、別紙第一記載のビラ約一、〇〇〇枚を配付して、組合の統制を乱した。
すなわち、右ビラは本件組合脱退処分という組合で決定された事項に対し、これを非難したものであるところ、そもそも組合員が組合運営上の問題について意見や見解を発表し、これを組合の運営のうえに反映させようとする場合には、組合規約第一五条によつて組合機関(委員会や代議員会)を通じて行なうことができるとともに、組合としても、無節操無定見な言論が無制限に流れて組合の団結に悪影響をおよぼすことを防止するために、組合員の意見発表は原則として同条項により組合機関を通じて行なうことを要求しているのである。しかるに、申請人らはこの方法をとることを怠り全く一方的に突然前記のビラを多数配付したものであつて、これが団結擁護の点から許されないことはいうまでもない。加えて、申請人らは、組合では支部代議員などの地位にあるものであるから、本件組合脱退処分問題について職場大会を開催し組合員の意見を求めるなどして組合運営の民主性は担保できるのにも拘らずこれを怠り、組合員の意見も求めないで一個の独断的見解をビラに託してこれを一方的におしつけ、組合員の攪乱、動揺をはかろうとしたものである。そして、このようなやり方が言論発表の方法として相当でなく真に組合員の団結を願うものの行動でないことも明らかである。もつとも、この点について申請人らは、当該行為は「組合活動の自由」「言論活動の自由」の範囲内に属する問題であると主張する。しかしながら、「組合活動の自由」なる観念は労働組合ないし組合員の対使用者との関係において主張されるものであるところ、申請人らの所為は使用者に対するものではなく、ことは労働組合内部における組合員と対組合ないし対組合幹部との関係であるから「組合活動の自由」なる観念を容れる余地はない。そして、組合員としての「言論活動の自由」が保障されるべきであり、組合民主主義を保障し、団結を維持、強化するうえにおいても極めて重要なものであることは、もとより当然であるが、それも無制限に許されるものではなく、組合員の団結を破壊し、統制を乱すような言論が許されないことはその性質上明らかである。
さらにまた、申請人らは、その配布したビラの中に虚偽を書きつらね言葉のあやを用いて、あたかも現組合が非民主的であるかのような印象付けを企らんだ。すなわち、(1)ビラには、申請人日浦が一貫して非組合員になることを拒否したかのごとく記載し昭和四二年一〇月三〇日には「組合事務所へ会社から受けとつた文書を調べに行き、『非組合員になるのはおかしいではないか』と抗議している」と記載しているが、事実はこれに反し、同人は文書を見て抗議するどころか「しやあないな」と了承の意を表明してその場を退去したのであり、また(2)ビラには「四二年一一月四日西山委員長に…事情聴取した」と記載されているがこれも事情聴取などというものではなく、申請人日浦は前記のとおり一旦暗に了承していたにもかかわらず何者の指導によるものか、申請人らグループが徒党を組んで大勢で西山委員長のところへおしかけて理不尽な難詰をはじめ、組合内に混乱をもち込みはじめたので同委員長は改めていつでも相談に来るよう申し述べたのが、真相である。(3)ビラには、支部代議員会における採決が七対六で強引に押し切つたかのように記載しているけれども、真実は申請人らのグループが反対したのみであつて、これを六とすれば賛否は一五対六であつた(一五票のうち七名は支部代議員兼中央委員八名は執行委員)。また申請人日浦を非組合員とする決議が実体的にも手続的にも有効であることはすでに述べたとおりである。そして、申請人日浦を非組合員とする組合決定に反対する行為および前記ビラ配布行為には共通の目的がある。即ち申請人らは会社の意を体して、会社と一体となつて被申請人組合を破壊し階級的な自主組織としての労働組合の階級性と自主性を抜き去ろうとする策動の一環として右所為に出てきたのである。
かくして、組合では、この申請人らの重大な統制違反行為に対して、申請人ら主張の組合規約を適用して第一次処分を行つたものである。
3 本件権利停止処分について
前述のように不当な意図に基いて行われた第一次ビラ配布行為は、本来除名処分にも相当すべきものであつたが、組合は申請人らに対して反省を求めかつまた反省の機会を与える目的で極めて軽い第一次処分に付したのであるが、それにもかかわらず申請人らは何ら反省するところがないばかりか、かえつて再度にわたり組合機関の信用を失墜せしめる目的でそのような内容を記載したビラを配布した。よつて組合において慎重検討の結果申請人らは賦課金も支払わないで統制に服さずまた申請人らのグループによる組合の団結破壊を目的とする攪乱行為をやめないことを重要な情状として考慮して本件権利停止の処分をなしたものである。従つて、また、二重の処分といわれる筋合もない。
4 組合の自主的判断を尊重すべきこと
処分の対象となる行為が団結破壊行為と全く認められない場合はともかくそうである場合にはどの程度の制裁が適当であるかは資本と権力に対する自主性を旨とする当該組合の自主的判断を第一次的に尊重すべきである。なぜならば何が団結を破壊する行為であり、どの程度の悪影響があるかは複雑な組織活動の発展の道程の中において生起する問題であり、組織の主体的条件と時期においてさまざまに異つた意味をもつてくるからである。
本件処分の内容は単なる権利停止処分に止まるものであつてユニオンシヨツプ協定の関係上当然組合員の解雇を招来することによつて生存権的危殆を惹起したり、組合員を組織外に永久に排除し組合員としての団結上の利益の享受を拒否するような除名ではない。このような場合第三者(裁判所)の介入は極力慎重でなければならない。
本件権利停止処分は、申請人らの一連の反組合的活動からみて処分の程度において何ら相当性を欠くものではないし、また第三者が相当性を云々すべきではない。
(三) 保全の必要性について。
申請人らは現在もひきつづき組合破壊行為に狂奔している。
もともと仮処分の必要性は仮処分決定時において存在することを必要とするものであることはとりたてて論ずることもない。いま万が一申請人らの申請を認容するならば組合の団結に与える影響は甚だ大である。
組合は申請人らの破壊行為から組織を守るため、昭和四三年六月一七日委員会において「申請人らの行為は団結を唯一のよりどころとする労働組合に対する攻撃である」からこれに対する闘いは「組合の組織を守る闘いである」ことを確認し、対策委員会を設置することを決定し、「組織を守る闘い」という活動方針等を作成し、全組合員にこの方針書を渡して職場における職場大会でそれぞれ討議し、全員一致でこれを決定した。さらに昭和四四年度定期大会において、これを特別議案として提出し討議のうえ組合の運動方針として決定しているのである。
このように申請人らを除く全組合員が一致して組織および団結の破壊行為と断定している申請人らの行為について何らこれを救済すべき権利も「必要性」も存しないことは明白である。申請人らの組合破壊行為が明らかであり、本申請もこのために為された訴権を濫用するものであり、申請を認めることはかえつて組合の破壊を助けることになることは明白であるから、このような場合仮処分の必要はないものというべきである。
第四証拠関係<省略>
理由
一、組合が会社の従業員をもつて構成される労働組合であつて、中央機構に最高議決機関として中央大会、次級議決機関として中央委員会をまた執行機関として中央執行委員会を有し、さらに大阪本社工場、東京事務所、伊勢原工場(神奈川県)の事業所単位に各支部を設置して、各支部には議決機関として支部代議員会、執行機関として支部執行委員会を有すること、そして、中央大会の承認を得て、大阪支部執行委員九名が中央執行委員となつて中央執行委員会を構成し、そして同支部代議員一八名、東京支部長、伊勢原支部長および同支部選出委員二名が中央委員となつて前記中央執行委員とともに中央委員会を構成すること、申請人日浦が昭和三二年三月に会社に入社し、同年五月に組合に加入し、昭和三八年一一月以降会社総務部勤労課に所属し組合では昭和四二年一〇月一八日大阪支部代議員に翌一一月六日中央委員に各選出されたこと、その余の申請人らが、いずれも会社の従業員であるとともに組合の組合員であり、そのうち申請人上村、同牧瀬、同千田、同富永は同日浦と同様に組合の中央委員兼大阪支部代議員に選出されたことはいずれも当事者間に争いがない。
二、組合が申請人日浦を非組合員にしたこと(本件組合脱退処分)の適否
(一) 組合が申請人日浦に対して、同申請人主張の如く組合規約「第二条。本組合は日本アルミニウム工業株式会社在籍社員の内次の者を除いた全従業員を以つて組織する。1会社役員、相談役、顧問2各課長以上及び技師、参事、部長付3経理部各課主任以上4総務部勤労課及び人事課主任以上並びに人事主担者5総務部守衛全員6秘書7嘱託及び試用期間中の者8其の他会社組合双方協議の上承諾した者」のうち第八号、および、「第一一条。組合員は次の各号のいずれかに該当するときはその資格を喪失する。3、第二条により非組合員となつたとき」を適用して非組合員にした事実は、当事者間に争いがない。
(二) ところで、労働組合においては、自主性を害する構成や不合理な差別を含まない限り(労働組合法第二条第一号、第五条第四号)、その構成員たる組合員の範囲を自由に定めることができるものである。したがつて、右の制約を逸脱しない限りは、その組合員資格を労働者のうち一定範囲に限定して、たとえば特定産業や業種の業務に従事する労働者にしたり、あるいは特定企業に雇傭される従業員にしたり、さらにはその内でも一定の従業員資格ある者(たとえば、工員、職員、職制など)に限定することも可能である。そして、これを本件の組合規約第二条について考察すれば、まず第一号および第二号の一部によつて労働組合法第二条第一号所定の会社利益代表者を組合員資格者から除外したあと、組合の固有事情を考慮しその政策的見地から、組合員資格者を会社の従業員と定め、さらにそのうちから第七号で従業員資格が十分に安定していない者を除外し、また第二号ないし第六号では労使関係を適正にするためにむしろ会社側の手駒として留保させておいた方が妥当と考えられる者を除外したうえ、第八号で「其の他会社、組合双方協議の上承認した者」を除外している。このように、右規約では会社従業員のうちにおける組合員資格のない者の範囲を、法律上ないし条理上当然に労働組合員たり得ない者ばかりでなく、組合の固有事情にもとずき多分に政策的考慮も働かせて相当広範囲に定めているのである。そして、同条第一号ないし第七号については、対象となる従業員としての職階が予め明確に決定されておりそれに該当する者は当然に組合員資格を失うようになつているが、かかる事前の決定のみではあらゆる事態に対処することも不可能であるから同条第八号では、事前には白地のままにしておきその後従業員のうちでも組合員にしない方がよいと考えられる者が出たときには、同条第一号ないし第七号所定の場合に準じ政策的見地も加えて検討して、その都度組合員資格を与えるか否かを決定してゆく、という建前をとつているのである。
しかして、同条第八号に関する組合決定は、規約の白地部分について規範的および政策的見地から意思決定してこれを補充する性質をもち、またその結果は個々の組合員にも保障されている団結権に関係するものであるから、かかる案件は組合にとつても重要な業務であり、また組合員の総意を代表する意思決定機関によつて決せられるのが相当である。けだし、右協議が会社側の圧力のもとに、あるいは組合役員の独善ないし独裁のもとになされる可能性のあることを考慮するとき、その必要は特に甚大なものといわねばならない。そして、成立に争いのない疎甲第一号証、疎乙第六号証によつて組合各機関の権限を考察すると、右案件は規約第二九条第二号所定の「重要な会社提案に対する方針及び具体策」に該当するというべきであり、したがつて組合の中央委員会の議決又は承認を得なければならないものである。なお、この点に関する被申請人の見解は、にわかに首肯できない。
(三) そうすると、昭和四二年一二月一三日の組合大阪代議員会で為された申請人日浦を非組合員とする旨の決議(その決議が為されたこと自体については、当事者間に争いがない。)は、議決権限のない機関において為された点ですでに無効というべきである。なお、この点につき被申請人は、組合の大阪支部代議員会はつねに中央委員会を兼ねる慣行があつた旨主張するが、これを認めるに足る疎明はなく、却つて成立に争いのない疎甲第二八、第二九号証によると、その然らざることが窺われる。
つぎに、弁論の全趣旨により成立の認められる疎乙第一三号証によれば、組合では昭和四三年六月八日の中央委員会において、あらためて申請人日浦を非組合員とする旨の決議がなされたことが一応認められるので、右委員会の構成に瑕疵がなくまた同申請人につき規約第二条第八号を適用した実体上の判断に違法がない限り、右決議をもつて同申請人は非組合員となる。
(四) そこで、組合が右組合規約を適用した実体上の判断につき、違法がないかを検討しよう。
1、申請人日浦の職務内容
成立に争いのない疎甲第二三(後記措信しない部分を除く)、第二四号証(後記措信しない部分を除く)、疎乙第二二、第四一号証、弁論の全趣旨によりその成立が認められる疎乙第六六号証および被申請人代表者の本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨を総合すると次の事実が疎明され、右認定に反する疎甲第二三号証、二四号証の一部記載は措信しない。
申請人日浦は昭和三二年三月作業員として入社し、現場工場部内に配属されたが、昭和三六年一一月二三日作業中右手を旋盤機械にまきこまれて環指、小指に傷害を受けた。そのため昭和三七年五月二一日以降総務部勤労課へ転籍し、これに伴い昭和三八年三月二一日に作業員から業務員に職掌をかえ、総務部保安厚生課に転籍し、さらに昭和四〇年九月一日この保安厚生課が総務部勤労課に吸収されたため、勤労課に所属することになつた。
ところで、勤労課の業務は課長の統轄のもとに、人事・労政・給与のグループ、福祉厚生、社会保険のグループ、安全警備のグループの三グループに分かれて運営されており、昭和四二年一〇月当時課長以下三〇名が在籍して、その内訳は男子二六名、女子四名であつて、このうち組合員は女子の四名、男子作業員の二名と男子業務員の申請人日浦、申請外赤沢、同中下の三名、計九名であつた。そして、女子四名は庶務・賃金計算・社会保険の補助事務に従事し、作業員の二名は清掃係と安全通路線引係であつた。男子業務員の中下は安全管理業務に従事していた。労政担当は、仁熊主任のもとに非組合員の橋本、および、組合員である申請人日浦、赤沢、園田(女子)によつて構成され、同申請人は、次のような業務に従事していた。(1)勤怠カードの確認(2)旅費支給伝票の検印(3)労働時間外協定(4)実労働時間把握(5)通勤定期券の手配(6)出張者の切符予約の手配(7)有期工勤怠、異動の把握。そして、そのうち(1)については従業員の勤怠考課を知ることができる立場にあり、(7)については前歴照会や作業考課又その他の人事資料をほぼ一手に集中して収集する建前上、大体有期工の採否や異動、有期工より本工への登用を掌握でき、また、(2)については旅費請求が規則に合致しているかどうかを査定し、(3)については申請人日浦が交渉の窓口になっていた(会社と組合は、二時間以上の残業については日毎に協定していた。)ものであり、(4)については第一次査定的な仕事もしていた。
そして、会社では昭和四一年秋頃から営業部門を強化する方針のもとに事務部門から営業部門に多数配置替しており、その結果事務部門では相対的に人手不足となり、勤労課においても昭和四二年一〇月頃は、課員が多くの業務を兼務していたうえ、さらには持ちまわりで業務処理したり、あるいは係の者がいないときは誰でもほかの者がやるという状態であつた。
また、当時組合では、会社が組合活動に支配介入する不当労働行為を行つているとして再三にわたつて会社に抗議しており、そのなかでもことに勤労課員の服部および申請人日浦の行動が非難されていた。
2、申請人日浦を非組合員とした経緯
前顕疎乙第四一号証、成立に争いのない同第一〇号証、弁論の全趣旨によりその成立が認められる同第一三号証および弁論の全趣旨を総合すると次の事実が疎明され、右認定を左右するに足る証拠はない。
昭和四二年一〇月初旬、会社の大谷総務部長より組合の西山委員長に対し、次のような申入れがあつた。即ち最近会社が営業部門強化策をとつて勤労課からも人を出した、このため勤労課は人手不足となり仁熊主任(当時)一人ではどうにもならずまた人事係も不足している、勤労課全体が業務運営上困つているのでこれを強化するため申請人日浦及び赤沢一憲をそれぞれ労政及び人事担当者として非組合員としたい旨の申入れがあつた。これに対し西山委員長は、申請人日浦は現在組合の委員であるので慎重に扱つてほしい、本人がこれを了解したならば文書で申入れてほしい旨返事をした。しかるところ、同月二八日午前、会社より正式に文書をもつて申請人日浦を労政担当、赤沢一憲を人事担当とするので非組合員にしたい旨の申入れがあつた。同日午後西山委員長がさらに説明を求めたところ、大谷総務部長は、赤沢は人事担当者として本店関係を担当させる、申請人日浦は労政全般の仕事をしている仁熊主任の補佐をさせる、例えば経営協議会に提出する資料、労働組合対策資料作りなど、今後労政上の重要事項、会社の機密事項も扱わせることにする、職務内容の変更については申請人日浦の了解を得ている旨の説明があつた。そして、同年一一月一日組合は中央執行委員会を開いて右案件につき審議したところ、勤労課が極度に人員不足であり業務がおくれ、資料等不足のために組合との日常の交渉も遅れていることなどから、仁熊主任一人では手不足は明らかであること、従来四名いた人事担当者も現在二名しかおらず本店担当者が欠けていることを確認し、また申請人日浦と赤沢には、職務を利用した反組合的行為が多いけれどもこれはその職務の性質と職制との結びつきが主たる原因になつていると判断して、同人らを非組合員にすることは相当である旨決定し、かかる見解のもとに前認定のとおり申請人日浦を非組合員とする旨が議決された。
3、そして、右組合規約の適用に関する組合の判断は単なる規範適用の問題にとどまらず、組合の次級意思決定機関である中央委員会による政策決定的要素をも含んだ判断なのであるから、そこには一定の裁量権が認められるものというべく、所定の範囲内における裁量行為については当不当の問題を生ずることがあつても違法を論ずべきではなく、その裁量が期待された範囲を超えた場合にはじめて違法となるものと解するのを相当とするところ、前記疎明された事実によると、申請人日浦の担当する業務には人事考課的事務や組合関係の労政事務が含まれていたことは否定できないうえ、さらに会社からの申し入れによれば、今後は同申請人に仁熊主任を全般的に補助をさせて労政上の重要事項や会社の機密事項をも扱わせたい旨の説明があり、また同申請人の業務がそのように推移するであろう状況も一応認められるのであるから、組合において同申請人の今後従事する業務について組合規約第二条第四号所定の「人事主担者」に準ずると判定したことには一応の根拠も認められるので、右判定にもとづき同申請人に同条第八号を適用して非組合員とした判断には、著しく不相当な点は見当らずこれを違法と論ずることはできない。
なお、申請人は、前記会社の申入れについて、会社の真意としては申請人日浦の職務内容を何ら変更する意思などはなかつたが、組合が同申請人を組合活動から排除すべく会社に不当な圧力をかけたため、やむなく会社は申請人日浦を非組合員としたい旨の申し入れをした旨、主張するが、右主張にそう疎甲第一四号証(弁論の全趣旨により成立を認める。)第二四号証および証人服部辰郎の証言ならびに申請人上村の本人尋問の結果は、前顕疎乙第四一号証、成立に争いのない同第七四号証弁論の全趣旨により成立を認める同第七三号証に照らしてにわかに措信し難く、他にこれを認めるに足る疎明はない。
三、本件権利停止処分について
(一) 労働組合の懲戒権について。
およそ団体には、組織を維持発展させその目的達成のために活動するためには、本来的に構成員に対する内部統制とその裏付けとして違反者に対する懲戒を必要とするから、その意味では団体には存立が認められる以上その固有の権利として懲戒権も認められるわけであるが、ことに労働組合においては、その団結体の存在と活動が労使相互の利害対立と力関係による対決というきびしい局面のもとで展開され、労働者の生存確保を終極の目的としており、しかも憲法上団結権や団体行動権をもつて保障されていることにかんがみると、その内部統制権の意味を考えるにあたつては団体一般の法理からだけではなく団結権保障の見地からも考察すべきである。しかして、労働組合の存在と活動は自主性と強い団結を実質的基盤として営まれるものであるところ、この関係において自律的な内部統制作用の果す役割は極めて重要なものであるうえ、他面で法は労働組合が民主的に運営されるべく配慮して内部規律が適正に為されるべく期していることを考えあわせると、かかる内部関係に対してはなるべく外部から干渉をおよぼさないようにするのが団結権保障にも適うものであつて、そのためには内部統制の問題では自律的規範の実現を自治的措置に委ねるを相当とする分野が広汎に認められるべきであろう。したがつて、労働組合がその自主的判断において団結体を維持するべく組合員に対し統制権を行使して懲戒した場合に、その判断の適否が問題にされたとしても原則的には組合内部で自律的に審査や修正がなされるべきであろう。もつとも、他方、組合員が労働組合内部で組合活動に参加しうる地位もこれまた団結権によつて保障されているところであるから、かかる地位も私権として保護せられるべく、したがつて前記労働組合の内部統制作用においても、その行使が組合員の団結権を侵害するまでに至つたと認められるときは、それは内部規律権の範囲を超えたものとして違法になり、その効果は司法作用によつて排除せられるべきである。このように、労働組合がその自治的範囲を超えて懲戒処分を加えたならばそれは無効となるわけであるが、組合運動が不断に事態の推移するなかの動態として存在し、しかも組合にはなによりも自主性が尊重せられるべきことにかんがみると、かかる無効な処分についても、その処分の効力を維持したとしても私権の侵害が認められない範囲すなわち本来の自治的範囲内においては、できるだけその自律的処置の結果を公認すべきであろう。そして、これを権利停止処分についてみるならば、たとえばその期間が本来的自治の範囲を超えて著しく長期に過ぎたために違法となつた場合には、その超えた期間については当然これを無効とすべきであるが、その本来的自治の範囲内の期間についてまではことさらこれを無効としなければならない理由は見当らず、むしろその自主的判断をもつて為された結果には干渉しないで、これを公認する方が、労働組合の自主性を尊重する所以になる、と考えられる。
(二) 第一次処分について。
1 次の事実は、当事者間に争いがない。
申請人上村、同牧瀬、同小田、同千田、同富永、同深井らは外七名(弁論の全趣旨によつて成立を認める疎乙第一六号証によれば、七名のうち申請外福田充具も組合大阪支部代議員兼中央委員であつたことが、疎明せられる。)とともに昭和四三年二月二日会社の出勤時である午前七時三〇分頃から約一時間にわたつて会社の門前において出勤者に対し別紙第一記載の「組合員の皆様に訴える」というビラを少なくとも六〇〇枚配布した(右枚数を超えて一〇〇〇枚配布されたとの被申請人の主張については、それを認むるに足る疎明がない。)ところ、これに対して組合は前記のビラ配布行為が、組合規約第一五条「組合員は組合機関の行動、決定についても報告を求め意見を述べ其の他組合活動の自由を持つが組合員として組合機関を通じて行なう」同第一七条「組合員は組合規約を遵守し、機関の決定にしたがい組合の健全なる発展のために努力する義務を負う」に違反するものとして、同第六一条「本組合員にして次の各号のいずれかに該当する行為のあつたときは処罰を受ける」同条第一号「組合規約に違反し機関の決定に従わず統制を乱したるとき」同第二号「組合運営、事業の発展を妨げたとき」を適用して標記申請人らに対し次のとおりの第一次処分を行なつた。(1)同上村権利停止五日間(2)同富永、同千田賦課金二日分戒告(3)同牧瀬、同深井、同小田賦課金一日分戒告
2 そこで、組合員の言論活動が無制限に許されるものであるかどうかについて考える。惟うに、団体が自治的に運営される場合には、これをめぐつて各構成員に意見の対立が生れることは避けられないものであつて、この対立した意見を合理的に集約するためには、なによりも意見表明と相互の討論が自由になされる必要があるけれども、かかる過程を保障するについても各団体にはその特質に応じた型態が存するのであつて、労働組合のように労使の利害が峻烈に対立する局面で強固な団結を基盤として資本と対抗すべく存立活動し、そのためには強い内部統制をも必要とする団体においては、組合員間の対立した意見の表明と討論および集約の過程が放任されるならば、ともすれば右過程の適正を失つて無定見と不合理に流れ、ときには外部からの干渉をも招くおそれもあり、そうなればかえつて団結を害する結果になるため、労働組合は右過程を合理的に機能させる機構を組合内部に設置してその利用を各組合員に保障する一方、内部統制権に基き組合員に対して意見を表明するにはもつぱら右機構を利用すべき旨義務づけ、その他の方法はとらないよう制約を加えることが必要となる。前記組合規約第一五条、第一七条はこの趣旨を定めたものといえよう。したがつて、組合は、組合員の組合機関以外の場における言論に対しては、その言論の内容、表明の時期方法、表明するに至つた事情、組合内部の民主性、組織状況、言論のおよぼす影響等の諸点から考えてみて合理的範囲において、右組合規約に基いてこれを制約し、その違反については組合規約第六一条に該当するものとして懲戒することができるものというべきである。
ところで、別紙第一記載のビラの内容を検討するに、被申請人は三箇所の虚偽記載を指摘するのであるが、まず、昭和四二年一〇月三〇日に申請人日浦が組合事務所へ会社からの申入文書を調べに行き、非組合員になるのはおかしいではないかと抗議しているとの記載は、同申請人がその日、非組合員になることについて抗議したと認むるに足る疎明はないが、他方前顕疎甲第二三号証、疎乙第四一号証によれば同申請人が一貫して非組合員となることには抗争していたことが疎明せられるので、この態度に照すとむしろ了承の意を表明したと認めるに足る疎明もなされていないというべく、右記載をもつて一概に虚偽と極めつけることはできないし、また同年一一月四日西山委員長に本問題について疑問点が多く事情聴取したとの記載についても前顕疎乙第四一号証によれば、その実態は同申請人が外数名とともに西山委員長のもとへ押しかけて、同申請人を非組合員とすることについて種々難詰したものであると疎明されるけれども、かかる宣伝文書の記載としてはこの状況を「事情聴取」と表現したからといつて、その当否は別としても、これらを直ちに虚偽記載とまで断ずることはできないし、さらに「七対六の微差で執行部の提案が可決された」との記載も、当日の大阪支部代議員会に出席していた代議員が一三名でその賛否が七対六であつたことについては当事者間に争いがないところであるから、右表現には議決に関して右代議員会の構成員である執行委員の態度につきことさら隠蔽し、それによつて読む者をして誤つた認識へ導こうとする意図も窺われるにしても、かかる宣伝文書における記載としてはこの程度の脚色をもつて直ちに虚偽であるとは極めつけられない。しかして、かかる宣伝文書においては与論の喚起を投機的に試みるのあまり、応々にして情報に誇張や脚色が加えられまた一方の見解が増幅されて伝達されるものであるが、別紙第一記載のビラの内容は、一方的見解から組合の運営が著しく非民主的に行われている旨烈しく非難するものであつて、前述のような脚色や穏当を欠く表現も少なからず含まれているから、かかる文書が同問題の審議や組合運営に関与しているはずの組合役員五名を含む一三名の一団によつて公然と配布されたならば、配布を受けた組合員におよぼした影響は少くないと思われる。
つぎに、ビラの配布された時期および配布されるに至つた事情等を認定すると、前顕疎甲第二三号証の一部、疎乙第一三、第四一号証、成立につき当事者間に争いがない疎甲第二一、第二二号証、疎乙第一二、第七二、第八七号証、弁論の全趣旨により成立を認める同第六九号証および証人板倉博の証言および申請人上村の本人尋問の結果の一部、被申請人代表者本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨を総合すれば次の事実が疎明せられ、甲第二三号証と上村の供述中左記認定に反する部分は、にわかに措信しがたい。
(1) 申請人らは、遅くとも昭和四一年頃から組合運動に関して現組合執行部に対抗するグループを結成し、同年と昭和四二年の一〇月には執行委員選挙にも立候補していた。
(2) 申請人日浦は、昭和四二年一〇月二八日頃会社の時岡勤労課長から、重要な会社機密に関する職務をさせるから非組合員になつてくれと言われたがこれを断わり、同月三〇日には組合事務所で、組合にもその旨を会社から文書で申入れされていることを確認していたところ、同年一一月二日の組合大阪支部代議員会において執行部より、会社から同申請人を非組合員にしたいとの申入があつたのでこれを了承したい旨の議題が出されたため、同申請人は「私は会社の申入を断つた」と発言し申請人千田、同牧瀬も反対し、さらに申請人日浦が後日の証拠収集のためにとテープレコーダーで録音しようとしたため、同代議員会は結論の出ないまま審議を打切つた。そこで執行部は会社に対して、会社の説明が本人の言い分と食違つていること、もし会社が同申請人の業務内容を真実変更するつもりならば充分本人を納得させるように申し入れた。さらに、同月四日には申請人深井を除くその余の申請人六名が外三、四名とともに組合の西山委員長を別室に呼出したうえ、申請人日浦を非組合員にするななどと口々に難詰し抗議した。その後、会社の大谷総務部長から組合に、申請人日浦の了解も得た旨の返答があつたので、組合では同年一二月一三日の大阪支部代議員会で執行部から再度右案件につき了解が求められ、採決された結果申請人ら六名の反対を除く執行委員代議員の一四ないし一五名の賛成を得て、申請人日浦を非組合員にすることが承認された。そして、会社と組合は、同月二六日以降同申請人を非組合員として取扱つた。しかしその後も、昭和四三年一月三一日昼休み時間中に大阪支部代議員会が開催されたところ、その開催直前に申請人牧瀬は脇書記長に対し、申請人日浦の業務内容が非組合員となつた前後で変りないからその点につき緊急動議を出したい旨口頭で申し入れたが、脇から当日の委員会には時間の余裕もないので委員会終了後にゆつくり事情を聞きたい旨返答されてこれを了承し、委員会終了後組合事務所において申請人牧瀬、同上村、富永、申請外琢磨と西山、脇との間で右緊急動議提出の件につき話し合われたところ、席上西山らが、その件については質問形式でやるべきこと申請人日浦の業務の変更は徐々に行われるであろう旨答えたので、申請人牧瀬らにおいては、緊急動議提出の件については執行部に受理を拒絶されたもの、と解して面談を終えた。かくして、同年二月二日に第一次ビラ配布が行われた。
なお、右経過中に申請人らを含む組合関係者間において、申請人日浦を非組合員とする件が組合規約第二九条第二号に定める「重要な会社提案」に該当ししたがつて中央委員会の議決を要するから前記代議員会の決議は無効であるなどと考えた者はなく、関係者すべてが右案件は大阪支部代議員会の議決事項であると考えていた。(別紙第一記載のビラ参照)
(3) 組合では、昭和四三年一月三〇日の大阪支部代議員会において同年春闘第一次方針案の職場討議の意見集約および春闘要求案作成小委員会で立案した春闘要求案の概略説明等が行われ、同年三月一〇日の第一回春闘要求提出をめざして組合の春闘要求案作成およびスト権確立のために組合員の意思を集約して行く段階にあつた。
さらに前顕疎乙第一六号証、成立につき当事者間に争いがない疎甲第一号証、疎乙第六号証、前記板倉証言により成立を認める同第六二号証によると、組合大阪支部代議員会では代議員総数一八名中五、六名というかなりな数を申請人らのグループが占めており、これらの代議員が職場大会を開いて申請人らの所信を訴えればかなり広範囲の組合員に問題を伝えることができたし、その結果組合員からの支持が得られればこれを基盤にして中央大会を招集させたりまた再度代議員会で審議しなおせば、申請人らの意見の占める比重がさらに増大したであろうし、あるいはかかる手順をふまなくても代議員会で質問や再審議することも要求できたはずであつて、このように申請人らにおいては組合機関を通じても言論、審議等の活動を行なう機会が十分にあつたことが疎明せられ、申請人らがかかる活動しようとするのを執行部が故意に妨害するおそれがあつた、と窺うに足る疎明はない。
以上論述して来たように、申請人上村らが行つた第一次ビラ配布は、文書の内容配布の時期と方法に照らせば組合員の心理を相当に動揺させてその団結にも少なからず悪影響をおよぼしたであろうことが推認される一方、申請人上村らにおいてはかかる方法によるほか組合機関を通じたのでは言論活動が出来なかつたような事情は何ら見当らないのである。そうすると、右行為は組合規約第一五条第一七条に違反して第六一条第一、二号に該当するから、組合が統制権を行使して申請人日浦を除くその余の申請人らに対して懲戒したのは正当であり、また第一次処分で行われた懲罰の程度が組合に認められている裁量権の範囲を逸脱するほど著しく過重であるとも思われないから、結局第一次処分には違法がない。
(三) 本件権利停止処分について。
1 組合が昭和四三年三月六日に、「(1)申請人上村、同牧瀬、同千田、同富永に対し、組合の役職を解任し、昭和四三年三月一一日より昭和四五年一〇月三一日まで権利停止。(2)申請人深井、同小田に対し、前記同一期間の権利停止。」旨の懲戒処分をしたことは当事者間に争いがなく、成立につき当事者間に争いがない疎甲第六号証によれば、申請人牧瀬、同富永、同千田、同深井、同小田については、第一次処分によつて命ぜられた戒告に伴う始末書提出および賦課金納付を履行しなかつたこと、申請人上村、同千田、同深井については、同月四日に行われた申請人日浦のビラ配布行為に立会つたこと、が懲戒事由であると認められる。
そして、申請人牧瀬ら五名が命ぜられた始末書提出および賦課金納付を履行しなかつたこと、同上村ら四名が後記申請人日浦のビラ配布に立会つたことは当事者間に争いがなく、同申請人が同月四日に別紙第二記載のビラを配布したことは申請人らの自認するところである。また、右処分の根拠となるべき組合規約の適条については、被申請人において明確な主張はないけれどもその主張の全趣旨に照らせば、第一次処分同様に組合規約第六一条第一、二号を適用したことが一応認められる。
2 そこで、まず申請人牧瀬ら五名が第一次処分で命ぜられた義務を履行しなかつたことが、前記組合規約に該当するかを考えるに、組合の懲戒処分とは組合員の非行に対する応報的な不利益処分というものではなく、組合の内部統制をしてゆくための裏付けとなる行為と解するのを相当とするから、これに付された組合員が命ぜられた義務を履行しなければ組合の統制も何ら実を挙げ得ないことになるのであつて、かかる態度をとる組合員に対しては組合はこれを統制違反と評価して、さらにそれを統制しその実を挙げるべく懲戒を加えることも許容される、といわねばならない。そして、これを評して同一懲戒事由に対する二重処分ということは、当を得ておらない。
つぎに、申請人上村ら四名が同日浦のビラ配布に立会つた件について考えてみると、別紙第二記載のビラの内容は別紙第一記載のビラほどではないにしても組合運営が非民主的に為されている旨組合執行部を誹謗するところがあり、かかる文書の配布に申請人上村ら四名が立会うことは前記第一次処分についての項で述べたと同様の理由によつて、組合の統制を乱し組合の運営を妨げたときにあたるというべきである。
したがつて、組合が申請人日浦を除くその余の申請人らに対して前記各行為につき組合規約第六一条第一、二号を適用して懲戒することは正当である。しかしながら、その懲戒処分の結果をみると、右申請人六名については、右権利停止期間中各種組合機関の審議および意思決定に参加することができなくなるほか、昭和四三年度ないし四五年度(弁論の全趣旨によると、同年度の組合役員選挙は一〇月末頃までには完了していると推測される)の組合役員選挙に参加する機会を失うほか、右申請人らのうち同上村、同牧瀬、同千田、同富永については、さらに昭和四二年度中央委員兼大阪支部代議員の地位を失うことになる。そして、それが組合活動に参加することを志す者に対して重大な苦痛を強いることは明らかである。しかして、前述した申請人らの統制違反の程度に比較すれば、右懲戒処分における権利停止期間は著しく長期に過ぎるというべきであるから、その長期に過ぎた超過期間分については組合の統制権を逸脱したものとして違法無効になるというべきであり、少くとも本件の最終口頭弁論期日である昭和四四年七月一〇日現在では本件権利停止処分は失効していると解される。(なお、前述のように、昭和四三年六月八日の中央委員会で申請人日浦を非組合員とする旨議決されたのであるが、当時においては権利停止期間が未だ長期に過ぎておらないことは明らかであり、したがつて右委員会の構成には瑕疵がない。)
なお、被申請人は、申請人らの前記各行為につき、従前から行われて来た諸々の組合破壊活動との結びつきを指摘するが、かかる事情については未だこれを認めるに足る疎明がなく、申請人らが従来から組合執行部に対し批判的であつたからといつて当然にその情状が加重されるものでもない。
また、成立につき当事者間に争いがない疎乙第一七ないし第二〇号証、第三五ないし第四〇号証、第五五ないし第五九号証、第七八ないし第八四号証、証人谷義一の証言により成立を認める同第四四ないし第五〇号証、第六〇号証、弁論の全趣旨によつて成立を認める同第三二号証および証人谷義一の証言ならびに弁論の全趣旨によると、申請人らは、本件権利停止処分後においてもその統制処分に誠実に服そうとせずに執行部を誹謗するビラ配布活動を続けており、そのために組合では団結が崩されるのをおそれてあらたな運動方針として「組織を守る闘い」をすすめていることが疎明されるけれども、かかる事情は申請人らに新らたな統制を行う事由とはなり得ても、本件権利停止処分の適否を判断するための資料とすることはできない。
四、保全の必要性について。
以上のように、現在では本件権利停止処分は失効し、組合は申請人日浦を除くその余の申請人らを組合員の権利を有する組合員として取扱う義務があるところ、組合は前記処分が為されたことを理由に同申請人らに対し、組合活動から排除し、あるいは組合の意思決定に参加させないでいる。ところが、同申請人らは前記認定の如く活発な組合活動家で、ことに組合執行部に対し批判的な立場にあつたものであるから、このまま組合活動が阻害されるようなことがあれば、償うべからざる損害を蒙ることは明らかである。従つて、これを避けるために、右申請人らが現在組合の組合員としての権利を有する組合員であることを保全する必要があるものというべきである。
五、そうすると、申請人日浦の申請はその理由がないからこれを却下すべく、またその余の申請人らの申請は正当であるから、無保証でこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 大野千里 木原幹郎 近江清勝)
(別紙第一)
組合員の皆様に真相を訴える!
過般組合ニユースで御存知のことと思いますが、本店一区日浦代議員の非組合員扱いの件につき会社より提案があり、執行部及び支部代議員会に於いて決議され、ごく自然の形で処理されたかのように見えましたが、本人は非組合員になることを拒否し続け又、組合運動を続けたい意志にもかかわらず非組合員の宣告を受けてしまいました。
ここに一般組合員の皆様にこの事件の経過を記し今後の組合運動のあり方についてもう一度考えて戴きたくここに真相を報告します。
一、四十二年十月三十日脇書記長より、日浦代議員の席へ「君は会社より非組合員になるように云われている」けど……と、日浦代議員の意向を打診に行つているが日浦代議員としては非組合員になることを拒否し組合事務所へ会社より受けとつた文書を調べに行き「非組合員になるのはおかしいではないか」と抗議している。
一、四十二年十一月四十二年度最後の支部代議員会に於いて組合として正式に日浦代議員の非組合員扱いの件を提出されたが、支部代議員会としては、会社側の提案と本人の意志とに相違点があるため、支部代議員会としては了承できないとの結論に達し、次期(四十二年度)代議員会に引継ぐことになつた。尚執行部としては、会社側に了解する旨伝えたあとではあるが、本人の言い分との間に食違いがある為再度調査の上決定したいとの意向を表明した。
一、四十二年十一月四日西山委員長に本問題について疑問点が多くあるため事情聴取した。
一、四十二年十二月十四日四十三年度最初の支部代議員会に於いて、議題に含まれず、その他の項目の中で日浦代議員の非組合員扱いの問題を提案され、召集時間は十二時十分~十三時までということであつたが、十二時五十五分から十三時五十分まで討議され、本件に関しては事前に連絡もなく、新代議員も多く、内容が全くわからない中で、次回支部代議員会に於て再度検討すべきだという意見にもかかわらず強行採決され、代議員数十八名中出席者十三名(新代議員六名)で採決され七対六の微差で執行部の提案が可決されました。
しかしこの事件の中には大きな問題点が含まれています。第一に現代議員を非組合員にするという会社の提案を現執行部は進んで承認したという事実である。会社の提案理由は君の仕事の中で会社の機密に関するものをこれから扱つてもらう為という理由ではあつたが現在でも仕事の内容は全くそれらに関係なく以前にも同じ仕事をしていた人が支部代議員をやつており組合の姿勢として逆行している。
第二に一般組合員にこの問題を知らさず又考える余裕を与えず執行部が抜き打ち的に支部代議員会で決議した事である。
第三に本人の意志を無視して組合幹部と会社側で事前に話合いを済ませており形式的に代議員会で決議したということは今後の組合員の身分保証は危険にさらされる可能性を多分に含んでいることを意味しています。
ここに良識ある組合員の皆様に訴え充分なるご批判を賜りたいと思う次第であります。
組合員有志
(別紙第二)
“公平な組合員の皆様に御協力をお願いします”
過般来より私の問題で組合員の皆様には大変迷惑をおかけしておりますがこの問題については私事でかたずけることは出来ないと判断し、皆様の御協力をお願いする次第になりましたのでよろしくお願い申上げます。
この問題の発端は組合執行部の独断的な取扱いによるものであり私の為に組合員七名の方が懲罰を言渡され非常に遺憾に思つておりますがビラの内容については何ら間違つておらず、いずれこの問題の白黒が判明され七名の方の無実が証明されるでしよう。
私が非組合員になることについては終始一貫して反対しており職制においてもいろいろ強制もされて来ました。しかしそれにも耐えしのび、組合を通じて何とか組合員(中央代議員)で残れるように身分保障の申入れを何回もしましたが職務の内容が会社の機密に関する仕事をやつてもらうからという会社の提案であつたのでその時点で職場の配置転換を希望しました。しかし委員長は取上げる事は出来ないと却下してしまい最終的には代議員会で強行採決され十二日後正式に職制より非組合員になるよう言渡されました。
このような重要な問題について組合員に一言も知らせず代議員会(議題はその他の項で扱い)だけで強行採決されることは労働組合運動からはずれており、又会社側の一方的な行為に対しては「大阪地方労働委員会」へ不当労働行為について二月十五日に申立を行ないました。今一度労働組合運動の民主的な運営に戻す為に頑張つております。
最後に、68春闘の大切な時期ではありますが皆様の暖かいお力添えにより一日も早くこの問題を解決したく努力しておりますので何分にもよろしくお願い申上げます。
前中央代議員 日浦陞